民泊やリゾートヴィラの稼働率は、施設の種類や地域、季節、営業の形態によって大きく異なり、「平均◯%なら安心」という一律の目安はありません。観光庁「宿泊旅行統計調査」(2025年年間値・確定値)では、簡易宿所の客室稼働率は全国29.6%、沖縄県34.7%でした。
本記事では、民泊の稼働率の平均を公的統計からどう読むか、そして収支計画で稼働率を考えるときに確認したいポイントを解説します。
稼働率とは?民泊で使われる「客室稼働率」の意味
稼働率は、販売できる客室(または日数)のうち、実際に宿泊に使われた割合を示す指標です。観光庁の宿泊旅行統計調査では、利用された客室数を総客室数で割った値が「客室稼働率」として公表されています。
一棟貸しのヴィラの場合は1棟が1客室にあたるため、「1年のうち何泊分の予約が入ったか」と考えるとイメージしやすくなります。たとえば年間365日のうち146泊の予約があれば、稼働率は40%です。
ただし、稼働率だけで収益が決まるわけではありません。宿泊売上は「稼働日数×1泊あたりの単価」で決まるため、稼働率が高くても単価が低ければ売上は伸びにくく、反対に稼働率がそれほど高くなくても単価が高ければ一定の売上になることがあります。
宿泊統計で見る客室稼働率の平均(全国・沖縄県)
観光庁「宿泊旅行統計調査」の2025年年間値(確定値)から、宿泊施設タイプ別の客室稼働率を抜き出すと次のとおりです。
- 全体:全国61.6%/沖縄県60.3%
- リゾートホテル:全国56.9%/沖縄県66.6%
- 旅館:全国38.2%/沖縄県43.6%
- ビジネスホテル:全国75.3%/沖縄県77.2%
- 簡易宿所:全国29.6%/沖縄県34.7%
沖縄県はリゾートホテルの稼働率が全国平均を上回っている一方、簡易宿所は全体と比べて低い水準です。一棟貸しの宿泊施設は旅館業法上の簡易宿所として営業許可を取るケースがあるため、統計上は「簡易宿所」の数字が参考にされることがあります。ただし簡易宿所には、一棟貸しのほか、ゲストハウスやカプセルホテルなどさまざまな形態の施設が含まれており、一棟貸しヴィラだけの平均を示すものではありません。
また、住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)で届け出た住宅は、宿泊させる日数が年間180日までに制限されています。この場合、計算上の稼働率は最大でも約49%(180÷365)になるため、どの制度で営業するかによって「平均」の意味合いも変わってきます。
民泊・ヴィラの稼働率が変わる主な要因
季節・曜日による変動
観光地の宿泊需要は、夏休みや大型連休、週末に集中しやすく、平日や閑散期は予約が入りにくくなります。沖縄では台風の接近による予約のキャンセルも想定しておく必要があります。季節ごとの観光客の動きについては、沖縄旅行の閑散期はいつ?月別観光客数と台風から見るヴィラの繁閑で詳しく紹介しています。
立地・アクセス
空港や観光地からの距離、ビーチへの近さ、周辺の飲食店やスーパーの有無などは、旅行者が宿を選ぶ際の判断材料になります。車での移動が前提となる地域では、駐車場の有無も予約に影響します。
料金設定と集客の方法
予約サイト(OTA)への掲載方法や写真、口コミの評価、需要に合わせた料金調整によっても予約の入り方は変わります。稼働率を上げるために料金を下げすぎると、単価が下がって収益性が落ちることもあるため、稼働率と単価のバランスを見ることが大切です。
オーナー利用や定期メンテナンス
オーナー自身の滞在日や、清掃・修繕のために販売できない日がある場合は、その分だけ販売できる日数が減ります。稼働率を比較するときは、分母となる日数の考え方もそろえておきましょう。
収支計画で民泊の稼働率をどう考えるか
収支シミュレーションを見るときは、前提となっている稼働率と単価がどのような根拠で設定されているかを確認しましょう。公的統計の平均値は、地域全体のさまざまな施設を合計した数字であり、個別の物件の実績や将来の収益を示すものではありません。確認しておきたい点は次のとおりです。
- 前提の稼働率・単価の根拠(公的統計か、近隣の実績か、想定か)
- 月ごとの変動を考慮しているか(年平均だけで計算していないか)
- 稼働率が想定を下回った場合(たとえば10ポイント低い場合)の収支
- 稼働に連動する費用(清掃費・手数料など)と、連動しない固定費の区分
特に、稼働率が下がっても固定資産税や保険料、ローンの返済などの固定的な支出は変わりません。表面的な利回りだけでなく、経費を差し引いた実質的な収支で判断することが重要です。利回りの見方は表面利回りと実質利回りの違いとは?リゾートヴィラ投資で本当に見るべき数字もあわせてご覧ください。
よくある質問
Q. 民泊の稼働率は何%あれば黒字になりますか?
黒字になる稼働率は、宿泊単価、借入の有無、運営や維持にかかる費用などによって物件ごとに異なるため、一律には言えません。想定する単価と費用をもとに損益がゼロになる稼働率(損益分岐点)を計算し、その水準を下回った場合の資金計画も考えておくことが大切です。
Q. 沖縄は全国平均より稼働率が高いのですか?
観光庁「宿泊旅行統計調査」(2025年年間値・確定値)では、沖縄県の客室稼働率は全体で60.3%と全国(61.6%)をやや下回る一方、リゾートホテル(66.6%)や簡易宿所(34.7%)では全国平均を上回っています。施設のタイプや年によって結果は変わるため、最新の統計を確認しましょう。
Q. 稼働率が高いほど良い物件といえますか?
稼働率が高くても単価が低ければ収益は伸びにくく、清掃や消耗品などの費用も増えます。また、稼働が多いほど建物や設備の傷みも進みやすくなります。稼働率・単価・費用をセットで見ることが大切です。
まとめ
民泊・ヴィラの稼働率に「これなら安心」という一律の平均はなく、施設のタイプや地域、季節、営業の形態によって大きく変わります。観光庁の統計では、2025年の簡易宿所の客室稼働率は全国29.6%、沖縄県34.7%、リゾートホテルは沖縄県66.6%でした。統計はあくまで目安として捉え、収支計画では稼働率と単価の根拠、月ごとの変動、想定を下回った場合の影響まで確認しておきましょう。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の収益や利回りを保証するものではありません。税務・法務の判断は専門家にご相談ください。