民泊やリゾートヴィラを営業できるかどうかは、土地の「用途地域」によって大きく変わります。旅館業法の許可を受けて営業する場合は、建築基準法上「ホテル・旅館」として扱われ、建てられない用途地域があります。一方、住宅宿泊事業法(民泊新法)による民泊は「住宅」として扱われ、工業専用地域を除く多くの地域で実施できますが、自治体の条例で区域や期間が制限されることがあります。「家が建つ土地」がそのまま「宿泊営業ができる土地」とは限らない点を押さえておきましょう。
用途地域とは?民泊・宿泊施設と関係する理由
用途地域とは、都市計画法にもとづいて、住宅地・商業地・工業地などの土地の使い方を定めた区分です。全部で13種類あり、それぞれの地域で建てられる建物の用途が建築基準法で決められています。
宿泊施設の場合、どの制度で営業するかによって「建物の用途」の扱いが変わります。旅館業法の許可(ホテル・旅館営業や簡易宿所営業)を受ける場合は「ホテル・旅館」、住宅宿泊事業法の届出で営業する場合は「住宅」として扱われるのが基本です。そのため、同じ土地でも、選ぶ制度によって営業の可否が分かれることがあります。
旅館業(ホテル・旅館)を営業できる用途地域
東京都都市整備局が公表している用途地域による建築物の用途制限の資料によると、ホテル・旅館の建築可否は次のとおりです。
- 建てられない:第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域、田園住居地域、工業地域、工業専用地域
- 条件付きで建てられる:第一種住居地域(床面積が3,000平方メートル以下の場合)
- 建てられる:第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域
つまり、閑静な住宅街として指定されている「住居専用地域」では、一棟貸しのヴィラであっても、旅館業の許可を前提とした営業は原則としてできません。ヴィラ用の土地を探すときは、用途地域の確認が出発点になります。
民泊新法(住宅宿泊事業)を実施できる用途地域
住宅宿泊事業法による民泊は、建物の用途が「住宅」として扱われます。同じ東京都都市整備局の資料では、住宅は工業専用地域を除くすべての用途地域で建てられるとされており、鹿児島市の案内でも、住宅宿泊事業の建物について建築できない用途地域は工業専用地域のみと説明されています。
ただし、住宅宿泊事業法では年間の宿泊提供日数の上限が180日と定められており、さらに自治体が条例で区域や期間を制限できる仕組みがあります。住居専用地域での営業日を制限している自治体もあるなど、地域によってルールが異なるため、法律だけでなく自治体の条例も確認が必要です。
用途地域以外にも確認したい規制
用途地域の条件を満たしていても、それだけで営業できるとは限りません。購入前には次のような点もあわせて確認しましょう。
- 市街化調整区域かどうか:市街化を抑制する区域では、建築そのものに許可が必要になる場合があります。
- 用途地域の指定がない土地:都市計画区域外などでは用途地域が定められていないこともあり、別の規制や手続きを確認する必要があります。
- 自治体の条例・景観計画:旅館業や民泊について独自の上乗せ規制、景観や建物デザインのルールを定めている自治体があります。
- 消防法・建築基準法の設備基準:宿泊施設として必要な消防設備や避難の基準を満たす必要があります。
- 道路・接道や上下水道:建築や営業に必要なインフラが整っているかも確認が必要です。
消防設備の考え方や手続きの流れは「民泊の消防設備は何が必要?自動火災報知設備・消火器と手続きの流れ」で詳しく解説しています。
購入前に用途地域を確認する方法
用途地域は、次のような方法で確認できます。
- 市区町村の都市計画担当窓口で確認する
- 自治体が公開している都市計画図(インターネット上の地図サービスを含む)で確認する
- 不動産会社から受け取る重要事項説明書の「法令上の制限」欄を確認する
そのうえで、旅館業の許可を所管する保健所、建築を所管する窓口、消防署にも、宿泊施設として営業する計画を伝えて事前相談しておくと安心です。購入から開業までの全体の流れは「リゾートヴィラ購入の流れは?説明会から開業までの7ステップと注意点」で解説しています。
よくある質問
Q. 住居専用地域でも民泊はできますか?
A. 住宅宿泊事業法による民泊であれば、住居専用地域でも実施できる場合があります。ただし年間180日の上限があり、自治体の条例で区域や期間がさらに制限されていることもあります。旅館業の許可を前提とした営業は、住居専用地域では原則としてできません。
Q. 簡易宿所も「ホテル・旅館」と同じ用途地域の制限を受けますか?
A. 建築基準法上、旅館業法の許可を受けて営業する簡易宿所も、一般に「ホテル・旅館」の用途として扱われます。ただし、建物の規模や自治体の運用によって扱いが異なる場合があるため、計画段階で建築指導の窓口に確認してください。
Q. 用途地域は後から変わることがありますか?
A. 都市計画の見直しにより変更されることがあります。既存の建物はただちに違法になるわけではありませんが、建て替えや増築の際に制限を受ける可能性があります。
まとめ
民泊の用途地域は、旅館業法で営業するか、住宅宿泊事業法で営業するかによって考え方が変わります。ホテル・旅館は住居専用地域や工業地域などで建てられず、第一種住居地域では面積の条件があります。民泊新法は多くの地域で実施できる一方、180日の上限や条例による制限があります。土地や物件を購入する前に、用途地域と関連する規制を窓口で確認しておきましょう。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の収益や利回りを保証するものではありません。税務・法務の判断は専門家にご相談ください。